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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

膝の痛みに対する新しい治療法、PRP療法とPDFFD療法について

2025年11月20日放送2025年11月27日放送

2025年11月20日放送

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2025年11月27日放送

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2025年11月20日放送(放送内容 資料はこちら

変形性膝関節症は、加齢によって膝の軟骨がすり減り、痛みを引き起こす病気です。日本ではおよそ800万人もの方がこの病気に悩まされており、歩く、立つといった日常の動作が難しくなることで移動機能が低下する身近で重要な疾患です。

治療はまず、運動療法や体重管理、物理療法、装具の使用、そして薬による治療といった保存療法が中心となります。それでも十分な効果が得られない場合には手術が検討されます。しかし手術は入院や体への負担が伴うため、希望されない方も多くいらっしゃいます。その結果、痛みを抱えながら生活を続けている患者さんも少なくありません。こうした背景から、より体への負担が少ない新しい保存療法の登場が長らく待ち望まれてきました。

その中で注目を集めたのが、PRP(多血小板血漿)療法です。1954年に海外で報告されたこの方法は、もともとは止血剤の研究として始まりました。しかし、血小板に多く含まれる成長因子が、組織の修復を促し、炎症を抑えることで痛みを軽減することが分かってきたため、2000年代から変形性膝関節症の患者さんの血液をPRPに加工し膝に注入するPRP療法が、一部の医療施設で行われるようになりました。

一方で、PRP療法にはいくつかの課題があります。膝の変形が進んでいる場合には効果が出にくいこと、自由診療のため費用の負担が大きいこと、さらに治療には遠心分離機と呼ばれる特殊な装置が必要であることなどです。また、血小板を扱う関係上、国への届出も必要とされるため、広く普及させるには限界がありました。

こうした課題を背景に、2022年から国内で使用できるようになったのが、PDFFD(凍結乾燥血漿由来因子)療法です。この治療法は、PRP療法の弱点を補う新しい選択肢として注目されており、治療効果や安全性、保存性、そして医療機関での導入のしやすさといった点で優れていると考えられています。
次回は、このPDFFD療法について、もう少し詳しくお話ししていきます。

2025年11月27日(放送内容 資料はこちら

前回の放送で変形性膝関節症についてご紹介しました。これは加齢によって膝の軟骨がすり減り、痛みを引き起こす身近で重要な疾患です。治療の基本は運動療法や薬物療法といった保存療法で、改善が難しい場合には手術が行われます。しかし保存療法の種類は限られており、新しい治療法が求められてきました。

その中で2000年頃から注目されたのがPRP(多血小板血漿)療法です。これは血液の中の血小板を濃縮して作った製剤を膝に注射し、痛みをやわらげる方法です。ただしPRP療法は膝の変形が進んでいる場合には効果が出にくく、自由診療のため費用が高く、さらに特殊な遠心分離機が必要です。加えて血小板を扱うため国への届出も必要で、広く普及するには限界がありました。

その後2022年から「PDFFD(凍結乾燥血漿由来因子)療法」が使用可能となりました。
この方法はPRP療法のいくつかの課題を補っており、患者さんの血液を専門の施設で加工し、約2週間後に戻ってきた製剤を膝に注射する治療法です。処置は数秒で終わり、入院の必要もありません。また従来のPRP療法より多くの成長因子を含んでおり、痛みの改善効果が高く、細胞の成分を含まないため、安全性が高いという報告があります。さらにフリーズドライ加工されているので、長期保存ができ、必要なときに高品質な状態で使えるという特徴があります。しかも、国への申請や特別な機器の導入がいらないため、医療機関にとっても取り入れやすいというメリットがあります。ただし自由診療のため費用の負担が大きく、膝の変形が進んでいる場合にはやはり効果が出にくいという課題もあります。

当院でも2023年より変形性膝関節症に対してPDFFD療法を導入しており、従来の保存療法で十分な効果を得られなったものの、手術は避けたいという患者さんから、症状が和らいだという声をいただいています。今後、変形性膝関節症に対してPDFFD療法は新しい治療方法として発展が期待されます。

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