会員専用ページ会員専用ページのご案内
文字の大きさ

ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

妊娠中のりんご病ウイルス感染/妊娠中のサイトメガロウイルス感染

2025年7月31日放送2025年8月7日放送

2025年7月31日放送

閉じる

2025年8月7日放送

閉じる

妊娠中のりんご病ウイルス感染(放送内容 資料はこちら

ヒトパルボウイルスB19は伝染性紅斑、いわゆるリンゴ病の原因となるウイルスで、妊娠中の妊婦が感染すると胎盤への感染や胎盤を通過して胎児に感染することがあります。

このウイルスの感染を予防するワクチンはありませんが、一度感染すると終生免疫で抗体が持続するため再感染しません。
妊婦が過去に感染して既に抗体を持っている確率は20~50%といわれています。
小児の感染が多く唾液や痰、鼻水などから感染するため、特に流行時はお子様を持つお母さんや子供と接する仕事をしている方は、マスクやうがい・手洗いをする、口を付けた食器や食べ物を共有しない、子供にキスをしないなどの注意が必要です。

小児の場合は、感染から10~20日間程度の潜伏期のあと、両側のほほに赤い紅斑状の発疹が出現、体や手足にも網目状の発疹が出ることが多いですが、他人への感染力が強いのはこれらの発疹が出る7~10日ほど前のため、典型的な症状が出た頃には既に他人への感染が成立しているということになります。
成人への感染では場合約半数は無症状で、感染に気付かないことも多いです。

妊娠中にヒトパルボウイルスB19に初感染すると約20%に胎児感染を起こし、感染した胎児の20%、すなわち感染した母親全体の4%の胎児に溶血すなわち赤血球破壊による胎児貧血が起こり、心不全や皮膚のむくみ、胸水、腹水などが出現します。自然治癒もありますが、流産や死産になることもあります。胎児への影響は妊娠初期の感染のほうが大きく、妊娠後期の感染、特に妊娠28週以降の感染では通常大きな問題にはなりません。

妊婦に初感染が疑われた場合は、抗体検査を行うことで妊娠中に感染した可能性を判断しますが、感染時期の推定が難しいこともあります。
胎児への感染の可能性が考えられる場合は、1~2週間ごとに胎児の超音波検査を行います。胎児に強い貧血が考えられる場合は専門病院で胎児への輸血を行うこともありますが、特に妊娠の前半期では胎児の予後が悪い場合もあります。

胎児にウイルス感染の影響が出るのは母親の感染から9週間以内で、症状が出なかった胎児や貧血から治癒した胎児が、のちに問題となることはないと考えられています。

特に流行期には妊婦さんは感染に気を付けて、感染の可能性が危惧される場合は速やかに担当医にご相談ください。

妊娠中のサイトメガロウイルス感染(放送内容 資料はこちら

サイトメガロウイルスは主に小児の唾液や尿から感染するウイルスです。小児期に症状がないまま知らずに感染していることも多く、健康な大人や子供が感染しても問題ありませんが、胎児期に母体から感染すると難聴、精神運動発達遅滞、てんかん等の障害を引き起こすことがあります。
妊娠前の女性の抗体保有率は約70%。一度感染するとウイルスは潜伏感染となり一生涯体内に潜伏感染で潜み、終生免疫により抗体は一生持続しますが、感染の既往がある妊婦でも体内に潜伏するウイルスの再活性化や再感染により胎児への感染を引き起こすことがあるのが特徴です。

感染既往がない妊婦のうち1%が妊娠中に初感染し、このうち約40%に胎児感染がおこります。感染した胎児の20%は症候性感染で、胎児期超音波検査で脳や肝臓、脾臓等の異常、または出生後早期から難聴や精神運動発達遅滞等を認めます。症候性感染の児では90%に後障害が残ります。感染しても特に所見や症状のない無症候性感染は約80%で、このうち90%は正常に発達しますが、10%は数年後にはじめて難聴や発達障害に気付くこともあります。
感染の既往の有無にかかわらず、妊娠中の胎児感染は起こりうるため、すべての妊婦は子供への接触や子供の唾液が付着している可能性のある食器や玩具に注意し、接触時には十分な手洗いやうがいが勧められます。

妊娠中の胎内感染の確立された胎児治療はありませんが、感染した児を生後早期からフォローしていくことは予後の改善に有用なため、無症候の児も含め出生後早期に胎児期の感染について知ることは意味があると考えられます。
出生後に児の抗体検査をしても児の胎内感染の有無がはっきりしない場合があり、現在最も有用な検査法は、生後3週間以内の尿からサイトメガロウイルスの核酸を検出する方法です。尿検査は保険適応のある通常検査の他に、最近ではスクリーニング検査として行う簡便な自費検査も広まってきています。すべての妊婦に胎児へのサイトメガロウイルス感染の可能性があり、妊娠中の胎児感染の診断も難しいのが現状ですが、感染した児は早期からのフォローが病状の改善に有益です。

みんなの健康ラジオ 放送一覧へ戻る