ラジオ番組 みんなの健康ラジオ
2024年12月5日放送(放送内容 資料はこちら)
現代はストレスの時代と言われています。ストレスによっておこる代表的な精神疾患が不安症です。
さて、不安とは人間なら誰にでも起こるものです。人が脅威にさらされた時に身を守るためにおこる防衛反応と考えられていますが、その反応が苦痛に感じるほど強く、そして長い時間続くようになると「不安症状」として認識されるようになります。
不安症状では、精神症状と身体症状の両方が生じます。精神症状としては不安感や焦り、いらいら感が挙げられます。身体症状は自律神経の変調により生じ、多彩な症状が全身に現れます。
頭部には締め付けられるような頭痛、押されているように重く感じるような頭痛、ふわふわするような眩暈、物が喉に突っかかっているかのような違和感、音への過敏性などが生じます。胸腹部には、息苦しさ、動悸、胸の痛み、下痢・便秘、頻尿などが生じます。その他、冷感や四肢の震えなども生じます。
これらの不安症状によって、社会生活機能に障害が出るようになると、不安症として治療が必要な状況となります。代表的な不安症に、全般不安症、パニック症、社交不安症があります。
全般不安症では、過度な不安感や不安症状が長時間持続することによって、生活機能の障害が生じます。
パニック症では、動悸や息苦しさなどの不安症状が急激に生じ、「このままでは死んでしまうかもしれない」と感じるほどの激しい症状が出現します。
社交不安症とは、いわゆる「あがり症」であり、人前など、人から注目される状況で不安症状が出現し、社会機能の障害が生じます。
いずれの不安症でも、複数の不安症状が同時に生じます。不安症状の出現の仕方によって、これら3つの病気に分けられています。
2024年12月12日放送(放送内容 資料はこちら)
不安は誰にでも生じますが、長時間持続すると疲弊してしまいます。不安への対応には、音楽を聴く、感情を書き出す、体を動かすなど様々な方法があります。
臨床の場面では、しばしば呼吸法や筋弛緩法が取り入れられます。呼吸法では、鼻から3秒間で息を吸い、3秒間止めて、その後口から6秒間かけて息を吐きます。筋弛緩法は、筋肉に力を入れ、その直後に脱力させることによりリラックスすることを感じます。
近年、不安症の治療としてよく取り入れられているのがマインドフルネスです。
人は不安状態にあると過去や将来への過剰な心配から「心ここにあらず」という状況になります。しかし、過去や将来に対して今現在は何もできません。過去や将来へのとらわれから、今できることに戻るためのエクササイズがマインドフルネスになります。
それ以外にも、認知療法的アプローチとして、物事の優先順位をつけること、本来の必要に気づくために、客観的に自分に対して「あなたがしていないこと」「し過ぎていること」「今すぐ、始めるべきこと」の3つのアドバイスをする、それにより頭を整理して不安に対応するといった方法も用いられます。
最後に不安症に対する薬物療法について説明します。不安症にはセロトニンという脳内物質が関与していると言われており、治療にはこのセロトニンを増やす薬が使用されます。
具体的には選択的セロトニン再取り込み阻害薬が用いられます。また、抗不安薬も用いられますが、依存性の問題から短期間のみの使用が勧められています。
これまで述べてきたように、不安症には、呼吸法やマインドフルネス、薬物療法など様々な対応法を組み合わせて治療が行われます。