ラジオ番組 みんなの健康ラジオ
FDG-PET検査について(放送内容 資料はこちら)
FDG-PETとは?
FDG-PETは「フルオロデオキシグルコース・ポジトロン断層撮影」の略です。FDG:フルオロデオキシグルコース(Fluorodeoxyglucose)とは、ブドウ糖を放射性同位元素(18F)で標識した化合物です。人体にFDGを静脈内投与すると、ブドウ糖と同じように体内の様々な組織(筋肉や肝臓、脳など)に取り込まれます。取り込まれたFDGを体外から特殊なカメラで撮像できる装置のことを、PET装置といいます。
がん細胞は正常の細胞よりも多くのブドウ糖を消費する性質を持つため、FDGはがん細胞に集まりやすい特性を持っています。この特性を利用して、FDG-PET検査ではがん細胞の位置や広がりを画像化することができます。
PET:ポジトロン断層撮影(Positron Emission Tomography)装置の基本原理
体内に投与されたFDGは、陽電子を放出して崩壊します。陽電子は電子と対消滅を起こし、511キロ電子ボルト(keV)のエネルギーを持つガンマ線を正反対の2方向に放出します。このガンマ線を検出し、得られた位置情報から三次元画像を構築するのがPET装置です。PET装置を利用することで、がん細胞の位置や活動性を詳細に描出することができます。
PET装置の利点
- 高感度:小さながん病変も検出可能です。
- 機能的情報:がん細胞の糖代謝活動を評価できるため、治療効果の判定などに有用です。
- 全身スキャン:一度の検査で全身のがんを調べることができます。
注意点
- 放射線被曝:放射性薬剤を使用するため、少量の放射線被曝があります。
- 特定のがんには不向き:一部のがん(早期胃癌、前立腺癌や膀胱癌など尿路系の癌)の検出が難しい場合があります。
- 血糖値の管理:高血糖状態では検査の精度が低下するため、糖尿病の方は事前に医師と相談が必要です。
- アレルギー:FDGによるアレルギー反応はほとんど報告されていませんが、ご心配な場合は担当医師にご相談ください。
2024年10月31日放送(放送内容 資料はこちら)
FDG-PET検査は、以下のような場合に保険適応となります
がんの診断・評価
- がんの病期診断、転移・再発の評価の診断が必要な場合
がん以外の特定の疾患
- 難治性部分てんかんで外科手術が必要とされる場合
- 虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)による心不全の診断が必要な場合
- 心サルコイドーシス:超音波検査や心電図で心サルコイドーシスが疑われる場合
- 大型血管炎(高安動脈炎、巨細胞性動脈炎)の診断が必要な場合
保険適用外のケース
- 健康診断や人間ドックとしてPET検査を行う場合
- がんの疑いがあるが、他の検査で確定診断が可能な場合
- 同じ月に複数回のPET検査を受ける場合
- 他の画像診断(CT、MRI、超音波検査など)を実施していない場合
FDG-PETの費用
健康保険が適用される場合は、自己負担額は通常の医療費と同様に3割負担となります。健康診断目的で受ける場合は全額自己負担となり、費用は約10万円程度です。
FDG-PET検査を受ける際は、保険適応の条件について事前に主治医とよくご相談ください。
FDG-PET検査の流れ
検査前の絶食:検査の5~6時間前から絶食します。飲み物は飲んでも良いですが、水やお茶など糖分を含まない物にしてください。
FDGの注射:FDGを静脈注射します。
安静:注射後、1時間程度安静にしてFDGが全身に行き渡るのを待ちます。
PET撮像:PET装置のベッドに横になり、撮像します。
FDG-PET検査は、がんの発見や病期診断にとても有用な検査です。正しい知識を持って、適切に利用することが大切です。