ラジオ番組 みんなの健康ラジオ
頚椎症(放送内容 資料はこちら)
加齢と共に、頸部痛、肩こりなどが生じることがあります。
このような方の頸椎X線では、クッションである椎間板のスペースは狭く、椎間関節の軟骨が擦り減り、骨が棘を出し尖ったりしています。このような状態を、変形性頚椎症と表現します。これは、膝であれば膝X線で軟骨のスペースが減ってきて、変形性膝関節症と表現するのと同じです。
変形性頚椎症は、加齢以外にも、ストレートネックなどの弯曲異常、遺伝的素因、外傷、コンタクトスポーツなどの繰り返し負荷、猫背などの姿勢不良で、発症しやすくなります。
しかしX線所見と症状は必ずしも一致しないので、痛みの原因を、問診、診察で見極める必要があります。発症要因、発症時期、どのような動作でどこの痛みが強くなるかを診ていきます。
発症要因は、多くの方ははっきりしません。寝違えや、捻ったなどの原因がある場合もあります。生活習慣は重要で、デスクワークやスマホで下向きを長時間する方にも多いと思います。
発症からの時間経過も重要です。2週間以内は急性期として、炎症が主体の病態が多いため、薬や安静などの治療になることが多いです。長期間痛みが続いている方は、自然治癒しにくくなっており、特に痛みの原因を考察する必要があります。
痛みが、どの動作で強くなるか、痛みがどこに出るかを診ていきます。前屈で痛みがあれば椎間板や筋、後屈では椎間関節や神経、回旋は関節や筋、側屈は関節や神経が原因になっていることが多いと思います。また上肢に痛みやしびれがあれば、神経由来の症状と判断します。
治療は、頸部痛だけであれば、基本的には手術適応はなく、薬、リハビリ、注射、カラーなどの保存的治療の適応になります。
頚椎症性脊髄症、頸椎症性神経根症(放送内容 資料はこちら)
頸椎の神経には、脳からつながる脊髄と、脊髄から左右に分岐する神経根があります。
変形性頚椎症は、加齢性変化により頸部痛を生じますが、神経症状が主体の場合は、加齢性変化+脊髄症状であれば、頚椎症性脊髄症、加齢性変化+神経根症状であれば頚椎症性神経根症と表現します。
頚椎症性脊髄症は、加齢性変化により脊髄が圧迫されます。脊髄症状は、痛みではなく、手足のしびれ、箸が持ちにくいなど細かい動作の障害、ふらつき、歩行障害、排尿障害などとなります。X線では脊柱管狭窄、MRIで脊髄圧迫所見があります。
症状は軽ければ経過観察となりますが、進行すれば保存的治療は効果なく、手術となります。特に転倒しやすくなると、頭部を打撲し、頚髄損傷で重篤な後遺症になってしまうこともあります。手術は、椎弓形成術、後方除圧固定術、前方除圧固定術などがあります。
頚椎症性神経根症は、加齢性変化により神経根が障害され、頸部痛、肩甲骨周囲痛、上肢の痛み、しびれ、筋力低下が出現します。痛みやしびれの部位は、頸部や肩甲骨周囲の痛みでは、神経由来とは言い切れませんが、上腕、前腕、手などの上肢の痛み、しびれがあれば、神経由来と判断します。神経の圧迫が強くなる姿勢である後屈や側屈で痛みやしびれが誘発されます。
X線の斜位像での椎間孔狭窄がわかりやすいです。
痛みやしびれは、薬、リハビリ、ブロック注射などで、比較的改善しやすいとされており、保存的治療が主体になります。筋力低下や保存的治療でも痛みが改善されない場合は、手術になることもあります。手術は、椎間孔拡大術、前方除圧固定術、後方除圧固定術などがあります。