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くも膜下出血について

2024年8月15日放送2024年8月22日放送

2024年8月15日放送

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2024年8月22日放送

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2024年8月15日放送(放送内容 資料はこちら

くも膜下出血という言葉は多くの方が聞かれたことがあると思います。脳と脊髄を合わせたものが中枢神経系で、骨との間に膜が3枚あります。外側が厚い硬膜で、その次がくも膜、内側が軟膜です。くも膜と軟膜の間は脳脊髄液で満たされていて血管が走行しています。この血管から出血するとくも膜下出血になります。

くも膜下出血の原因疾患としては脳動脈瘤が85%と最も多く、他には脳動静脈奇形、脳動脈解離、頭部外傷(外傷性くも膜下出血)などがあります。今回と次回の2回にわたって、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血についてお話ししたいと思います。

くも膜下出血は日本の急性期脳卒中の6.5%をしめ、女性は70歳代前半、男性は50歳代後半にピークがあります。日本及びフィンランドで多く、中東では稀です。一親等以内の動脈瘤保有者の家族歴は危険因子です。他には喫煙習慣、高血圧、大量飲酒が危険因子とされています。

脳動脈瘤は一生のある時に後天的に生じるもので、その保有率は人口の数%程度、保有者のうち1年当たり1%弱が動脈瘤壁の炎症により増大し破裂に至るとされています。横浜市では年間当たり1000~2000人程度が発症していると思われます。

一般的に重症度は高く死亡、後遺症を残す、回復それぞれ約1/3ずつと考えられています。また約20%は病院に到着する前に亡くなられてしまいます。くも膜下出血の量が多いほど重症で、くも膜下出血そのものが直接的に脳に障害を与えるためです。

突然の今まで経験したことのない頭痛で発症するのが典型的ですが、何日か過ぎた後に頭痛が直らないと歩いて受診される方も時々おられます。診断は、頭部CT、MRIを注意深く見ればほとんどの例で見つけることが出来るとされています。

2024年8月22日放送(放送内容 資料はこちら

今回はくも膜下出血の治療を中心にお話ししたいと思います。
治療の目標は脳をくも膜下出血のダメージから回復させる、再出血を予防する、二次的に生じる遅発性脳血管攣縮(3~14日頃に生じる)及び正常脳圧水頭症などから脳を守ることです。再出血は発症6時間以内が特に高率であり、充分な鎮痛、鎮静を行います。次いで3D-CTA、DSAなどで動脈瘤の検出を行います。

破裂脳動脈瘤を保存的に治療すると最初の1か月で20~30%が再出血をきたし転帰不良となります。再出血の予防としては開頭手術(動脈瘤ネッククリッピング術など)と血管内治療(コイル塞栓術など)があります。重症でなければ発症72時間以内の早期手術を行います。

血管内治療の近年の技術の向上、道具、材料の進歩は非常に目覚ましいものがあり、最難関のステント併用コイル塞栓術でも成功率、合併症率、転帰は開頭手術と同等になってきています。通常の破裂脳動脈瘤の治療については、多くの施設で血管内治療の方が選択されることが増えてきていて、この傾向は続いていくと思われます。

遅発性脳血管攣縮に対しては薬剤の投与などが行われますが、治療困難なことも多いです。手術を無事終えお話や食事ができていた患者さんが亡くなってしまうこともあります。正常脳圧水頭症に対してはV-P、L-Pシャント手術などが行われます。

脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血に対する治療は大変困難なものですが、すべてうまくいくと社会復帰できます。治療を担当した者にとって大きな喜びとなるところです。
破裂する前に脳動脈瘤を見つけて処置をしてしまうというのは有力な考え方ですが、実は簡単ではありません。これについてはまたの機会に譲りたいと思います。

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