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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

運動と呼吸

2024年7月4日放送2024年7月11日放送

2024年7月4日放送

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2024年7月11日放送

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2024年7月4日放送

呼吸と運動の関係

呼吸は吸気・呼気からなっています。酸素は吸気により肺の末端の肺胞に送り込まれ、毛細血管の血液の中に取り込まれます。心臓のポンプ作用により、筋肉に運ばれた酸素は、筋細胞内のミトコンドリアでエネルギー産生に利用されます。車がエンジン内での燃焼により動き出すように、筋細胞内での燃焼により、筋肉が動く力になります。この過程で産生された二酸化炭素は血液に溶解し、肺胞で呼気により、体外に排出されます。

短距離走のように無酸素性運動と呼ばれる、酸素を使わずにエネルギーを供給する反応もありますが、筋肉に乳酸が蓄積することにより、長い間継続することができません。そのため、運動の継続には呼吸・循環による酸素供給、二酸化炭素の排出が必須であり、平常時よりも増大する酸素需要にこたえるために、1回の換気量や呼吸回数、血液流量が増えます。

何らかの呼吸器疾患により血液への酸素の取り込みが悪くなったり、1換気量と呼吸回数の積からなる換気量が増加できない状態や、心疾患のために酸素を運ぶ血液流量が増加できない状態では、運動による筋肉での酸素需要に対応できずに、筋肉の疲労、呼吸困難をきたします。需要と供給バランスのミスマッチです。

医療の現場では、包括的な呼吸・循環・運動能力の測定のために6分間歩行試験が行われます。
60代後半の方であれば、6分間に600m前後の歩行が可能ですが、呼吸・循環・運動能力のうちひとつに問題があれば、歩行可能な距離は短くなります。同じ患者において疾患の進行によって距離は短くなり、治療などにより状態が改善すれば歩行距離が長くなり、疾患の重症度の指標として用いられます。

呼吸・循環・筋骨格の疾患をコントロールすることが、運動能力を回復・維持するための第一歩です。

2024年7月11日放送

運動選手が筋力・持久力トレーニングをすることにより肺活量・心拍出量の増加、筋肉への酸素供給能力を増して記録を更新していくことができるように、疾患を抱えた方もトレーニングにより持久力の改善、ある程度の呼吸機能の改善が期待できます。
気管支喘息は気管支が炎症により狭くなり発作性の喘鳴をきたす疾患ですが、20分間以上の有酸素運動を週2-3回・4週行うことにより、呼吸機能の改善、QOLが改善することが報告されています。スピードスケートの金メダリスト清水宏保さんが気管支喘息であったことはよく知られています。

逆に労作時呼吸困難により身体を動かさないことは、食欲の低下や筋力・体力の低下を招き、呼吸困難のさらなる増加をきたして、運動制限が増強するという負のスパイラルに陥ります。
呼吸リハビリテーションでは、疾患の重症度にあわせて、トレーニングを段階的に行っていき、必要であれば酸素を吸入しながらトレーニングを行って運動の制限因子を減らします。
また、呼吸器疾患の患者では、しばしば呼吸困難などによる食事摂取量の低下がありますが、疾患により呼吸そのものでのエネルギー需要の増大をきたしており、栄養管理が重要であり、リハビリテーションと合わせて栄養指導を行い、呼吸リハビリテーションの効果が上がるようにします。

一方、運動により気管支喘息発作が誘発されたり、肺気腫・COPD(慢性閉塞性肺疾患) では呼吸数の増加時に呼気が十分にできずに吸気が十分にできない状態になり呼吸困難が増強することが知られています。この予防のためには、運動前の気管支拡張剤の吸入が有効です。

重量挙げやスキューバダイビングなど気圧の変化を伴うスポーツでは気胸・縦隔気腫と呼ばれる、本来は風船のような閉鎖空間である肺からの空気漏れが生じ、突然の呼吸困難、胸痛が生じることがあります。
また、現在の超高齢社会においてフレイルやサルコペニアを有する方の増加が運動と呼吸に影響していることも忘れてはいけません。

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