ラジオ番組 みんなの健康ラジオ
2024年2月1日放送(放送内容 資料はこちら)
女性のがんで最も罹患者が多いのは乳がんです。乳がんに罹る人は年間10万人ほどいます。
その治療には手術、薬物療法、放射線治療などがありますが、手術の中でも乳房全摘手術を行うと、乳房を失うことになります。この全摘手術に対して、何かしら別のもので乳房のふくらみを再現するのが、乳房再建術です。
がんを治療するという意味では、乳房再建は必須の治療ではありませんが、女性らしさの象徴を失うことが患者さんに与えるダメージは大きいので、再建手術は見た目とともに気持ちの改善にもつながります。
手術のタイミングや回数、再建方法などにより、乳房再建にはいろいろな組み合わせがあります。
患者さんのライフスタイル、体型・乳房の形態、乳がん治療の状況、乳房に対する価値観など総合的に判断し、医療者の助言を得ながら患者さんご自身が選択することが重要です。
乳房再建の方法は、まずそのタイミングと手術回数で分けられます。
乳がんの手術と同時に行うのが一次再建、乳がんの手術とは別のタイミングで行うのが二次再建です。また手術の回数により、一期再建、二期再建と分けられていて、その組み合わせで、一次一期再建、二次二期再建などと呼び分けています。
一次再建は乳房の喪失感がないこと、手術回数が少なくて済むことなどのメリットがあります。一方で、乳がんと診断されてから間も無いので、時間や心理的な余裕がない中でいろいろ決めないといけなかったり、乳腺外科と形成外科が揃っている施設でしか行えないというデメリットもあります。
一方で二次再建は、時間的余裕はできるものの、乳房のふくらみのない期間ができたり、手術回数や費用が増えるというデメリットがあります。一次再建ができない施設で乳がん手術を受けた患者さんが別の施設で二次再建を行うことも可能です。
一次再建も二次再建も必ず担当の乳腺外科の先生に再建の希望を伝えてください。そして、許可や紹介状をもらってから形成外科を受診してください。
2024年2月8日放送(放送内容 資料はこちら)
乳房再建の方法には人工乳房を使用する人工物再建と自分の組織を使う自家組織再建があります。
人工物再建は2013年から健康保険が適応となった再建方法です。ティッシュエキスパンダーという風船のようなものでふくらみのスペースを確保してから、半年程度間をあけてシリコンインプラントへの入れ替えを行います。基本的に二期再建で手術が2回必要です。
胸以外にキズが増えず、手術時間・入院期間とも短めで、比較的身体への負担が少ないことがメリットです。また、両側乳がんの患者さんでも手術を行いやすいというメリットもあります。
しかし、シリコンインプラントの形が合わない胸には再建がしにくく、感染・露出・破損の危険性などがあり、長期的には入替手術が必要などのデメリットがあります。
人工物の手術が健康保険で行えるのは、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会で認定された施設のみで、大学病院や総合病院などの他、一部の専門クリニックでも行えます。
自家組織再建では自分のお腹や背中を使う方法が一般的です。お腹の脂肪を利用する遊離腹部皮弁はボリュームのある胸の再建に適しています。一方背中の筋肉をつかう有茎広背筋皮弁は小さめの胸の再建に適しているとされます。
胸以外にもキズができること、手術時間が長いことなどのデメリットがありますが、軟らかくなじみの良い乳房の再建ができるのが最大のメリットです。
患者さんの体型やそれまでに受けてきた手術、生活スタイルなどによっては、お勧めできない手術方法がある場合もあります。手術を受ける病院で再建を担当する形成外科医師の診察を受けて、手術の向き不向きを判断してもらい、手術方法を選択してください。